デザインしないというデザイン

2017.9.27

デザインするデザインしない

様々なグラフィックデザインが世の中に溢れています。子供から大人まで、生活する環境を問わずほとんどの人がデザインに触れて日常生活を営んでいる現代です。グラフィックデザインは、印刷物やWEBで毎日のように目で見て手に取る身近な存在です。デザインというと特別なことをして生まれた特別なもののように思ってしまう人も多いと思いますが、それは大きな誤解です。このコラムでは「デザインしないデザイン」という角度から、デザインの一端をご紹介します。

何もしないという行動

私たちが何気なく行っている行動のなかで、あえて「しない」という行動があります。「する」という行動があるのと同時に「しない」という行動がある。言葉にすると妙な感じがしますが、それはとても自然なことなのです。例えば、スリムな体を求めて行うダイエット。ダイエットは食べることを控える、あるいは食べることを「しない」という行動です。休日にのんびりすることは何かを「しない」という行動で、仕事中に昼食をとるということは休憩をとって1時間ほど仕事を「しない」という行動です。「する」ことと「しない」ことは表裏一体で「しない」という選択には「する」ことを否定する大きな意味を持っています。これはデザインについても同じです。真っ白なスペースに何かしらのデザインをする、ということが意味を持つ行為なら、逆にデザインしないのもとても意味のある行為なのです。

空白をつくるデザイン

デザインしないデザイン

例えば上のようなシンプルなデザインの診察券があります。これは極端な例ですが、まさに「しない」を実践したデザインと言えます。真っ白なスペースにクリニック名があるだけのデザイン。なんだか物足りない…。そう感じる人もいるかもしれません。しかしこの診察券にはクリニック名以外に何も要素がないので、とてもクリニック名が際立っていて品のあるデザインに仕上がっています。

デザインしないデザイン

このデザインもとてもシンプルです。クリニック名の他には1本のラインがあるだけ。右側に余白があるので何かしら情報やマークを配置したくなってしまいますが、その欲望をぐっとこらえて何もレイアウトせずにシンプルに仕上げています。クリニック名とラインという2つの要素が、たっぷりとった余白と響き合い、独特のバランスをつくり出しています。

このようなデザインがとても品のいい印象を受けるのは、意図した空白につくり手の余裕を感じられること大きいでしょう。隙間があれば埋めてしまおう。そういうデザインでは、このような印象は実現できません。有名ブランドや企業など提供するサービスや商品に自信のあるところでは、このような顔つきのデザインが多くみられます。空白をつくるデザインには、空白にデザインを「しない」ことで、空白を含めた気持ちのいいバランスを考えてつくられた意図があり、それが見る人にポジティブな印象を与えることができます。

デザインは考え方と整理

余白を活かしたシンプルなデザイン。それは、あえてデザインを「しない」デザインです。そういったデザインで診察券をつくる場合には、情報をうまく整理することが大切です。診察券の場合は表面と裏面があるので、表面をシンプルにするためには、受付時間や電話番号といったクリニックの情報を裏面に上手に整理する必要があります。表面と裏面に無意味に情報が重複することなく、利用者が理解できるようきちんと情報を表記すること。そのために情報を精査して最低限の文字数にすること。そういった整理がデザインの役割です。

デザインの価値は独自性や複雑な造形にある。その考えは大きな誤解です。利便性を考えた必要な情報の精査、デザインをしないことで生まれる品格、そういったものの理解と取り組み方がデザインの価値を形成しています。

診察券のデザインは考え方と整理

ブログライター

WRITER

ながしま 明

いつくかのデザイン事務所勤務を経て、2006年有限会社デザインウルフを設立。多くの企業の商品やサービスについてブランディング、販促活動をデザインにてサポート。ロゴ、WEB、印刷、映像、コピーと職種を超えるマルチクリエイター。

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