デザイナーの実力とは?
2021.6.29
デザイナーズ診察券の診察券は、デザイナーがデザインした診察券を提供するサービスです。日本全国のクリニックから注文を受け、それぞれの状況に合わせてアレンジして診察券をお届けしていますが、多くのお客様からデザインを指示されてご注文いただいています。(選ばれる理由のトップは「デザイン」)デザイナーズ診察券の診察券は、「クリニックに好印象を与えたい」「患者さんの気持ちまで明るくしたい」という意思を持ってデザインされた診察券です。そういったデザイナーの意思がデザインに反映されているため、ご注文いただいた多くのクリニックから「他とは違う」という評価をいただいています。診察券に限らず、デザインはデザイナーの力によって生み出されています。では、デザイナーの実力は、いったいどこから来るのか。経験なのか、生まれながら持ち得たセンスなのか。デザインについての理解を深めるために、デザイナーという職業について少しだけ紹介したいと思います。
デザイナーは技術職
ここで言うデザイナーは「グラフィックデザイナー」のことで、グラフィックデザイナーは平面に表現されるメディア(ロゴや広告や商品パッケージ)をデザインするデザイナーです。少し前まではWEBをデザインする人をWEBデザイナーと呼び、グラフィックデザインとWEBデザインをする人はまったく違う職種でしたが、グラフィックデザイナーの領域は年々幅を広げていて、最近では各分野の境界線が曖昧になっています。僕もかつてはWEBは自分で大まかなデザインをした後、最終的に仕上げるのはWEBデザイナーに仕事を引き継いていましたが、現在ではWEBシステム構築に至るまですべての工程をグラフィックデザイナーである自身で完結するようになりました。写真・映像撮影や映像編集、コピーライティングに至るまで、デザインの領域を越えて様々な業務を行っています。そういった傾向は僕だけでなく、時代の傾向と捉えてもいいでしょう。しかし、どんな業務でもグラフィックデザイナーとしての考え方がベースとなっています。
デザイナーというと「印象を扱っている曖昧な職業」というイメージがあるかと思いますが、実際はかなり技術的な職能を持った職業です。もちろん、「印象を扱っている」というのは間違いではないので、数値に出にくいものにチャレンジしているという側面はありますが、ほとんどの場合「技術による労働」がメインの仕事になります。デザインするためには情報を整理する「レイアウト」という技術、全体を調和させる「配色」という技術、印刷、映像、WEBといった「メディアに適応させる」ための技術など、デザイナーとして必要な技術は盛りだくさんです。パソコンを使う仕事なので、仕様のアップデートにも常に対応しなければなりません。30年以上前、パンフレットを印刷するためには特殊な印刷原稿が必要で、デザイナーがいないと印刷物をつくることができませんでした。現在ではパソコンとアプリケーションがあれば、誰でも印刷会社に印刷を発注することができるようになりましたが、「品質」を求める場合にはやはりデザイナーの職能が必要になります。デザイナーの仕事は、目と脳を使って様々なことを処理する知的労働ですが、デザインを形にするためにパソコンに長時間向かい、デザインが完成するまで様々な方法で何度も検証し、場合によってはゼロから制作し直すことも…、といった具合に肉体にもかなり負荷がかかる仕事です。何となく気楽に歌を歌いながら楽しくやっていそうな職業に思えそうですが、実際はひどく地道で疲労が蓄積する技術職なのです。
資格のない職業
グラフィックデザイナーは資格を持たない職業です。例えば建築の世界では、建物を構成するために建築士というライセンスがありますが、グラフィックデザイナーがデザインをするために取得しなければならない国家資格はありません。実はこの点がこの職業を難しくさせている原因でもあります。多くのデザイナーは自身の名刺に「グラフィックデザイナー」と入れた瞬間から、プロのデザイナーになります。美術大学を卒業したとか、専門学校で学んだとか、そういった学歴は一切関係なく、デザイナーと名乗ることでデザイナーになれる、それがこの職業です。プロフェッショナルかアマチュアか、言葉や資格による定義がないため、学習や経験がなくても誰でもなれる職業なのです。
スキルに開きのある職業
誰でもなれる職業である以上、デザイナーによって実力に開きがあるのは当然です。同じ会社の同じ制作部門で隣同士の席に座っていたとしても、1年目のデザイナーと10年目のデザイナーでは、知識や処理能力に違いがあっても不思議ではありません。経験が少なくても多くても、デザイナーという職業で給料を得ている以上どちらもプロフェッショナルに違いありませんが、体得したものが違えばつくり出されるデザインも違ったものになります。ただし、プロとして過ごした年数がそのままデザインの品質に反映されるということではありません。医者やスポーツ選手と同じく、どんな現場でどのように仕事に取り組んできたかで、体得するものが違うからです。

質の高い環境で質の高い課題に取り組んできた場合とそうでない場合では、身につくスキルが違うものになるのは当然です。デザイナーとして価値ある経験とは、年数ではなく「質」です。クライアントや上司に言われたことをこなすだけの数十年間よりも、ハイクラスな目標を自分に課して何倍もの結果を目指して邁進した数ヶ月の方が、品質をつくりだすスキルが身につくのは当然です。デザイナーはライセンスのない職業ですが、本当に価値のあるデザインをつくり出すためには、実践的で質の高い訓練が必要です。
デザイナーにとって「資質」は必要か?
デザインは目的を達成するための手段です。その点、美術作品とは成り立ちが異なります。また、どんなに生まれ持った美的感覚があっても、それだけでは何の役にも立ちません。「1%の才能と99%の努力」といった言葉がありますが、デザイナーもそういった例えが当てはまる職業です。もちろん、視覚伝達を職業にするわけですから、美的感覚があるに越したことはありません。しかし、生まれながらにして持っている資質など、実践によって磨かれ増えていくものに比べたら本当に微々たるものです。絵が上手に描けるからと言ってデザイナーになって生活できるわけではなく、元々持っている資質だけで成立するような職業ではありません。
結果を出せるデザイナー
デザイナーがつくり出すデザインに期待されること、それは何でしょうか?企業やサービスが魅力的に見えること、ブランディングによって利用者との間に信頼を築くこと、それによって売上が増えること。グラフィックデザイナーは広告、WEB、サイン、パンフレットといったメディアをデザインし、それらは販売促進の役割を担っています。依頼主はこう考えるでしょう。「デザインがよければ売れる」それは間違いではありません。実際にデザインが売上に貢献した例は数多く存在します。商品は同じ、サービスも同じでも、広告デザインの品質が高くて売上が伸びることは実際にあります。僕のデザイン実績でも「売上が倍になった」という劇的な変化の報告を受けることが何度もあります。売上が上がったのでデザインだけの力か?といえば厳密には異なりますが、1つのデザインがスタッフの意識を変え、会社を変え、サービスを変え、それが結果として「売上」というわかりやすい数字に表れることがあります。デザインが「派手」「奇抜」「目立つ」「独創的」だから売れたというのではなく、訴求する対象のことを考慮しデザインを目にする人の心を掴むことができて初めて、結果を出すことができます。
もちろん、我々デザイナーは毎回同じ反応をする機械ではなく、未知なるものに挑戦する以上、毎回毎回ホームランを打つことはできません。予想外の要因があって、思うような結果が出せない場合もあります。しかし、品質をつくり出すことができるデザイナーなら、打率の高いバッターのように、大失敗するリスクを軽減する力を持っています。奇抜なCMや倫理すれすれのキャッチコピーのように、ハイリスクなクリエイティブを展開するのが優れたクリエイターだと誤解している人も多いですが、僕はよくクライアントに「優れたデザイナーは安全牌です」と説明しています。
デザイナーの報酬
売上だけでなく、商品やブランドのイメージアップ、利用者との信頼を築くようなデザインをつくりだすデザイン能力は、数日でつくられるものではありません。そのため、品質の高いデザインをつくれる実力を持ったデザイナーになるためには、それに適した環境と数々の実践が必要になります。どの分野でもそうですが、能力の高い人材は高コストです。そして高コストな人材が多く在籍している会社は、そうでない会社よりも料金が高くなります。安くて品質が不安なもの、高くて品質が期待できるもの。皆さんはどちらを選びますか?デザイナーズ診察券では本来は高いはずのデザインを、よりたくさんのデザインを予め用意し、それを選んでいただくことでコミュニケーションにかかる時間とコストを抑えています。また、診察券は在庫が切れた場合に再注文する必要のある商品なので、長年お使いいただくことでその売上から少しずつデザイン費用を相殺し、デザイン料を別途ご請求せずリーズナブルな料金を実現しています。
デザイナーの今後
インターネットによる情報通信、そしてパソコンをはじめとしたテクノロジーの進化によって、我々デザイナーという職業も以前とは少しずつ業務の内容が変わってきました。以前まで当たり前にしていたことが不要になり、代わりに新たな業務が加わり、デザイナーの業務にも変化が訪れています。しかし、アイデア、レイアウト、配色といった技術など、デザイナーのベースとなる技術の需要は、時代が変わっても大きく変わることはありません。AIをはじめ、テクノロジーが人の代行をできる範囲は増えていくと思いますが、単純な数値に表すのが難しい繊細なものを扱う仕事なので、今後も実力を持ったデザイナーが活躍する場は、広がっていくだろうと考えています。

WRITER
ながしま 明
複数のデザイン事務所勤務を経て、2006年有限会社デザインウルフを設立。多くの企業の商品やサービスについてブランディング、販促活動をデザインにてサポート。ロゴ、WEB、印刷、写真、映像、コピーと職種を超えるマルチクリエイター。
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