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アナログ診察券のデザインの有効性:デジタル化とデザインの関係

2026.9.7

診察券のデザイン アナログvsデザイン

近年では様々な分野でデジタル化が進んでいます。飲食店や販売店などのキャッシュレス決済をはじめ、営業活動、経理、物流などあらゆる業務がデジタル化によって合理的に整理されるようになりました。

クリニックでもデジタル化によって、業務に変化がでてきていると思います。いままで煩雑だった業務が効率的に整理され、ミスやモレがなくなり、スタッフに余裕が生まれるといったメリットも多いことでしょう。

しかし、デジタル化をすることで、いままで維持してきた良さが失われてしまうというデメリットもあります。ブログ「医療現場におけるデジタル診察券の落とし穴|アプリ化のデメリット」でも紹介しましたが、業務をデジタル化したのに余計に手間がかかってしまい以前よりも仕事量が増えた、ということもあるかもしれません。もちろんデジタル化によって飛躍的に業務が改善するクリニックもあるでしょう。デジタル化によって「良くなる」のか逆に「悪くなる」のか、闇雲にデジタル化に進むのではなく
自身のクリニックがデジタル化に向いているのかどうかを見極めることも大切です。

診察券のデジタル化とコスト

診察券を廃止して予約・受付・精算のフローをデジタル化した「医療DX」を実践することでクリニックには様々なメリットがあります。業務を効率化するだけでなく、スタッフのストレスを軽減し、キャンセルのリスクを防止することができます。しかし、デジタル化にはコストがかかります。利用者の数、つまり売上が多くても少なくても、月額費用という形で月々のランニングコスト発生することをしっかり考えておきましょう。

デジタル化にはいくつかの方法があり、LINEアプリを使って予約フローだけをデジタル化する方法から、予約・受付・精算のフローを含め利用者の情報とマイナンバーカードを連動するといった方法まで、クリニックの運営に適した方法を選択する必要があります。小規模クリニックの場合、デジタル化を実現するために必要な費用は、およそ以下の通りです。

  • 初期費用:10〜50万円
  • 月額費用:2〜7万円

クリニックの規模によりシステムの費用は大きくなる場合もありますが、20名以下の小規模クリニックの場合はこのくらいの費用が目安になります。初期費用と違い、月額費用については年間24〜84万円をみておく必要があります。もっと費用をかけて「自動精算機」や「WEB問診」を組み合わせた「完全フルデジタル化」を行えば、スタッフの数を減らして経費を削減することも可能ですが、診察券をアプリ化するだけのデジタル化では人員を減らすほどの効果は期待できません。

診察券のデジタル化で減る業務と変わらない業務

大きな費用をかけてあらゆる業務をデジタル化しない場合、つまり診察券をデジタル化するだけの場合に、スタッフにとって減る業務はかなり限定された「一部分」になります。

  • 診察券の受取りと返却 再発行対応
  • 診察券への記入と再発行

そして、診察券をデジタル化した後でも引き続き行う業務は以下のようなものがあります。

  • 保険証(マイナ保険証)の確認・資格確認業務
  • 問診票の記入案内・手入力
  • 診察後の呼び出し
  • 会計(現金・クレカ処理)
  • 処方せん・処方薬の受け渡し

一方で診察券の代わりとなるアプリのダウンロードや操作方法を、スマホの使い方が不得手な患者さんに説明するといった新たな業務が発生します。診察券をデジタル化することのメリットは必ずあるでしょう。しかし、クリニックの運営や利用者にマッチしていないと「トータルで考えると逆に仕事が増えてしまった」ということになりかねません。また、デジタル化はメリットばかりではなく、それにより失ってしまうものもあります。

デジタル化で失われる「デザイン」の訴求効果

デザイナーズ診察券はアナログの診察券を提供するサービスですが、診察券のデジタル化を100%否定するつもりはありません。クリニックの運営や利用者といった状況にマッチしていれば、診察券のデジタル化はクリニックの運営に大いに貢献することでしょう。

しかし、診察券を廃止してしまうと、当然ながら診察券の「デザイン」が失われてしまいます。診察券にはクリニックが患者さんに大して訴求する「デザイン」が含まれていますが、この情緒的情報がデジタル化によってごっそりなくなってしまうのです。

診察券のデザインは、診察券を手にする患者さんがクリニックをどんな印象を持つのかを左右する需要な部分でもあります。診察券のデザインが「明るくかわいいデザイン」であれば「明るく可愛いクリニック」という印象を持つことになり、診察券のデザインが「スマートでセンスを感じるデザイン」であれば「スマートでセンスを感じるクリニック」という印象を持つことになる。言語とは違う視覚で受け取るデザインの情報は、言語よりも速く定着しやすい情報なのです。

デジタル診察券やLINEアプリは、システムのフォーマットに組み込まれることになりますが、診察券の場合は独立したアナログの個体なのでクリニックの個性をしっかり患者さんに届けることができます。デジタル化はとても意味のある行為ですが、診察券を廃止した場合には「デザインの訴求効果」も同時になくなってしまうことも考慮しておきましょう。

デジタル化で失われる雇用

診察券をデジタル化するだけでスタッフの数を減らすことはできません。しかし、診察券だけでなく様々なフローを完全にデジタル化してしまえば、スタッフの数を減らして経費を下げることができるようになるでしょう。これによりクリニックの経営に少し余裕が生まれるかもしれません。しかしそれは「100%正解」でしょうか?会社や病院は運営することでスタッフの「雇用」を生み出しています。人を雇うということは、人の生活を支えるということです。それは、医療活動という病院の本筋と同時にとても意味のあることです。

病院の運営が資金的に厳しいのに現状のスタッフを雇い続けるというのは間違いですが、デジタル化によってスタッフの数を減らすことは、「誰かの生活基盤を提供するのをやめる」ということなのです。

アナログ診察券のメリット

最近の研究では同じ内容の文字やデザインをアナログ(紙など)で受け取るかデジタル(画面)で受け取るかによって脳で処理する傾向が異なることがわかってきました。

イスラエル工科大学のラケフェット・アッカーマン(Rakefet Ackerman)教授らによる、学生を対象とした時間制限と学習理解度の実験(2011年)では、画面で文章を読んだ学生は紙で読んだ学生よりも「自分は内容を完璧に理解できた」と自己評価が高くなる傾向があったものの、実際のテストを行うと、画面で読んだグループの方が平均スコアが低かったことがわかりました。これはデジタルの即効性を確認するとともに、画面で見たものが記憶として定着しにくいことを示唆しています。

バンガー大学とMillward Brownによる神経科学実験では、デザインや写真を見た際、紙媒体の方が脳の「感情処理」や「空間認知」を司る領域(腹側線条体や帯状皮質など)が圧倒的に強く反応したと報告しています。

画面で情報を受け取るのか、実在するアナログの診察券から情報を受け取るのか。クリニックをイメージを患者さんに効率的に定着させるには、デジタルではなくアナログ診察券の方が向いているようです。

デジタルとアナログのハイブリット型

最近では診察券を従来通り制作し、「予約」の部分だけをアプリなどでデジタル化するクリニックが増えています。アナログとデジタルが混在して「逆に手間がかかるんじゃ?」と思いがちですが、電話による予約を完全に廃止して「予約」の業務を完全にデジタル化すれば「手間が増える」心配はありません。

クリニックの印象をポジティブに定着させるのが得意なアナログの診察券、時間や場所を選ばずいつでも予約できるデジタルアプリ、この2つを上手に併用するハイブリット型は現代的で賢い選択かもしてません。

ブログライター

WRITER

ながしま 明

複数のデザイン事務所勤務を経て、2006年有限会社デザインウルフを設立。多くの企業の商品やサービスについてブランディング、販促活動をデザインにてサポート。ロゴ、WEB、印刷、写真、映像、コピーと職種を超えるマルチクリエイター。

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