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「大人の事情」を感じさせないデザイン

2026.3.23

大人の事情

私たちの身の回りにはたくさんのデザインがあり、それらのほとんどがメーカーやブランドといった企業、つまり法人組織から発信されています。映像や印刷物などの広告をはじめ、スマホからお菓子のパッケージに至るまで、様々なデザインは個人ではなく法人の中で決定し世の中に拡がっています。

デザインは担当者の一存で決まる場合もありますが、多くの場合はチームを統括する上司やその上の上司の決済を経て決定されています。担当者が最善と思って立案した内容があっても、会社の上司がその案を承認するとは限りません。例え10人のスタッフがいいと思っていても、決定権を持つ1人の上司が首を縦に振らなければ、案は決定されないのです。そういった過程で、生まれてしまうのが「大人の事情」です。

デザインがぎこちなくなる元凶

街を歩いて目にするデザインの中に「あれ?なんでこんなデザインなんだろう?」と疑問に思うようなデザインがあります。全体としてはとてもいい雰囲気なのに、一部分に違和感のあるものが配置されていて「?」となるデザインです。その部分がなければとってもいいデザインなのに…。そう思ったことはないでしょうか?そういった不可解なデザインには、必ずと言っていいほど「大人の事情」が隠れているものです。

説明しないとわからないようなキャンペーンのマークが入っていたり、企業名が入っていたり。ケースは様々ですが、それらは違和感があってそれがあることによってデザインがぎこちなくなっています。なぜそのようなことが起きてしまうのか。理解に苦しみますね。

そのようなデザインが決定されるのは、見る人手に取る人、つまりユーザーの目線を無視しているからです。ユーザーの立場に立ってデザインを決定した場合には、そのようなぎこちないデザインにはなりません。もちろん、発信する方と受け取る方で多少の違いがあるのは否めませんが、同じような場所で同じように暮らしている人が考えるなら、発信側と受取側の反応は誤差の範囲内で収めることができるはずです。デザインに違和感があり「?」を感じるようなら、耳を疑いたくなるようなことが理由でデザインが決定されていることがあります。

  • 何となくブルーが好きだから
  • 上司がこっちの方がいいと言うから
  • いままで継続してきたことだから
  • 変えたい気分だから
  • よく見るデザインに似せたいから
  • 社長が反対してるから

デザインをつくるデザイナー、その案件を進める企業の担当者、案件を決済する上司。デザインに関わるそれらの意思がユーザーのことを考えて仕事をしていればデザインがぎこちなくなることはありません。そうでない場合はデザインがとても煩雑なものになってしまいます。

上司が決めたから仕方がない、同僚の意見をくまないといけないから仕方がない、といったユーザーと関係のないところでおこる理由を「大人の事情」と言って片付けてはいけません。仕方ない…。本当にそうでしょうか?ただ単に上司を上手に説得できなかっただけではないでしょうか。

デザインがぎこちなくなる元凶は大人の事情

信頼を損ねる「事情を感じるデザイン」

クリニックの診察券でも「ちょっとおかしなデザインだけど院長がこうしたいと言っているから」と、違和感を無視してつくってしまうとどうなるのか?誰もが納得する理由もなく「気分」で出来上がってしまったデザインは、ユーザーである患者さんの「?」につながってしまいます。看板がグリーンなのに診察券がオレンジだったり、表面にも裏面にも同じことが記載してあったり、受付時間と診察時間の違いがわかりにくい表記だったり。患者さんの立場に立ってデザインを決定しないと、「?」どころか患者さんの不快感を促し、クリニックの信頼を損ねる結果にもなりかねません。

例えば「院長がブルーが好きだから」という理由があって診察券をブルーにしたとしても、患者さんにはまったく関係のない話です。患者さんの願いは信頼のおけるクリニックで適切な医療を受けたいだけです。患者さんが求めるのは「ブルーが好きな院長」ではなく、「患者の立場に立ってくれるクリニック」です。内部の事情で決定されたデザインは、日々の献身的な医療行為で積み上げたクリニックの信頼を損ねる危険性があります。

参考ブログ)
安心感の生まれる背景
診察券は約束

必要なのは合理的に考えられたデザイン

すべての人に好かれるデザインを実現するのはとても難しいことです。その一報で、患者さんの立場に立って考えられたデザインなら、誰もが納得できるデザインになるでしょう。そのためにはデザインを合理的に考える必要があります。理にかなっていて誰もが納得できる状態ということです。「院長がブルーが好きだから」とか「上司が言っているから」というのは、まったく合理的ではありません。

「大人の事情」というのは、実は「情けない大人の事情」です。私たちはいつでも子供に胸を晴れるよう、合理的で違和感がない仕事に努めていきましょう!

ブログライター

WRITER

ながしま 明

複数のデザイン事務所勤務を経て、2006年有限会社デザインウルフを設立。多くの企業の商品やサービスについてブランディング、販促活動をデザインにてサポート。ロゴ、WEB、印刷、写真、映像、コピーと職種を超えるマルチクリエイター。

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