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デジタル化の落とし穴

2021.9.10

デジタル化の落とし穴

近年、デジタル化(電子化)によって様々な環境が変わってきています。請求書、納品書、お知らせといった、いままで郵送で対応していた書類がデジタル化し、様々な分野でペーパーレスの時代がはじまっています。いままで紙の書類に整理していた情報が、デジタル化されることでスペースを取らず合理的に管理できるようになるのは言うまでもありません。しかし、場合によってはデジタル化は「便利」よりも「不便」をもたらす悲劇もあります。デジタル化によって業務が効率化し、サービスの品質が向上するためには「条件」があるからです。

デジタル・アナログ併用の問題

あらゆるものはデジタル化によって効率が高まるか?というと例外もあります。不用意にデジタル化を導入したときに、ありがちな失敗が「デジタルとアナログの併用」です。例えば、受付を効率的にするため、WEBやアプリで受付のフローを完結したとします。しかし、患者さんが来院した記録をノートにとっていたらどうでしょう?受付はデジタル、記録はアナログでは、デジタルとアナログ両方の業務が必要になり、効率的になったというより業務が増えたと言わざるを得ません。書類をパソコンでつくり、それをプリントしてFAXでやり取りした場合も同じです。パソコンを使って情報をデジタル化したとしても、プリントした時点でそれは「アナログ」です。FAXで送信した場合も受信側は紙で受け取るので、これも「アナログ」です。FAXで受け取った方は受信した紙をスキャンして電子化するか、情報を自身のフォーマットに合わせて打ち直すか、いずれにせよ業務が増えてしまいます。

こういったロスが、小規模な法人だけでなく大手銀行や公的機関といった大きな予算を持ったところでも起こっているのが現状です。デジタル化をすることは間違いなく効率的になると誤解してしまいますが、システムが上手に噛み合っていないと現場の仕事をいたずらに増やし、スタッフが疲弊する大きな原因となります。デジタルにはデジタルの利点があり、アナログにはアナログの利点があります。ただし、それを不用意に併用してしまうと、予想外のダメージを招くことになります。

意外と時間がかかるデジタル

デジタル化して業務がスピーディーになった、という事例はたくさんあります。なぜ、業務がスピーディーになるのか?それは作業効率や情報共有効率が高まるからです。100ページ以上ある書類をFAXで送ったり、コピー機で複写して郵送したりするよりも、デジタル化された書類をEメールで送った方が効率的なのは目に見えています。しかし、気をつけなければいけないのは「デジタルの方がアナログよりも効率的で速い」と思ってしまうことです。もちろん、間違いではありませんが、それが「すべて」ではないことを認識しておきましょう。診察中に体の状態を説明するときに、紙にペンでササッと絵を描いて渡すという場面もあると思いますが、同じスピード感でそれをデジタルでしようとすると、かなり高いスキルが必要になります。どう考えても「デジタルよりもアナログの方が効率的で速い」というシーンがあることを忘れてはいけません。

費用対効果の問題

診察券でも、データ整理・共有のシステムでも、デジタル化で課題となるのが「費用対効果」です。導入するための初期費用とランニングコストが、導入後のメリットと釣り合うかどうか?ということですが、ここで考えなければならないのは、デジタル化することでスタッフの業務と利用者へのサービス品質にどのような影響があるのか?ということです。経営者の場合は、その見込みをある程度明確な数字に置き換えて判断しなければなりません。将来への見込みというのは不確定要素なため、100万円投資して100万円のメリットがある、いわゆる「トントン」ではいけません。環境を変えるときにはスタッフの業務など数字に現れにくい負担が必ずあるので、投資額よりも大きなメリットを期待できることが大切です。

増えること 減ること

デジタル化を導入する前に、そによって増えることと減ることをしっかり考える必要があります。いままで時間をかけて作業していた業務がデジタル化によって短縮されれば「業務負担が減る」ということに、利用者にとって便利になれば「継続的な利用者が増える」ということになると思います。例えば診察券を廃止して、スマホのアプリに置き換えた場合はどうでしょう?診察券を持ち歩かなくていいので「減った」とも言えますが、利用者のスマホに管理しなければならないアプリが「増えた」とも言えます。利用者に対してアプリについて説明するスタッフの業務も「増える」ことになるでしょう。デジタル化を進める際には、メリットとデメリットを冷静に分析して判断しなければなりません。

ブログライター

WRITER

ながしま 明

いつくかのデザイン事務所勤務を経て、2006年有限会社デザインウルフを設立。多くの企業の商品やサービスについてブランディング、販促活動をデザインにてサポート。ロゴ、WEB、印刷、映像、コピーと職種を超えるマルチクリエイター。