いいデザインと悪いデザイン
2021.6.24世の中にはたくさんのデザインが存在しています。また、デザインの分野も建築、広告、ファッション、商品と多様です。街を歩くとき、自宅で寛ぐとき、私たちは意識しようとしまいと様々なデザインに囲まれて日々暮らしています。診察券にも「デザイン」が含まれていますが、クリニックではどんなデザインを採用していますか?それはいいデザインですか?あまりよくないデザインですか?商品パッケージや広告やWEBのデザインを「これはいいデザインだ」と感じることがあると思いますが、それはいったい何を基準に判断しているのでしょうか。グッドか?バッドか?それを端的に精査するのは難しく、誰もが納得できる数値化できるようなものではありませんが、ビジネスにおけるデザインにはやはり優劣を判断できる基準があると思います。
役割を果たすデザイン
診察券を含むビジネスにおけるデザインには役割があります。複雑なレイアウトを必要としない看板にも「はっきりと表示する」「名称が明確にわかる」「夜になっても見える」といった必要条件があり、それらを満たすものでないと意味がありません。WEB、パンフレット、診察券、紹介カードなど、すべてのデザインには役割があり、それをデザインの中で果たしていく必要があります。もし診察券にクリニック名が記載されていなかったら、どのクリニックの診察券なのかわからなくなりますよね。受付時間の表がわかりずらくて何曜日の何時に通院したらいいのか理解できない、カラーリングがWEBや看板とあまりにも違うので同じクリニックに見えない、デザインが奇抜すぎて診察券に見えない、そういったデザインでは診察券の持つ役割を果たすことができません。それは間違いなく「悪いデザイン」です。
診察券に限らずポスターや広告などあらゆるデザインにおいて「役割を果たすデザイン」が「いいデザイン」と定義することができます。どのビジネスでも求める「売上を上げたい」という単純な条件から「女性に好感を持たれたい」という難しい条件まで、デザインには個々に求められている条件があります。例えば安売りを特長にした食料品スーパーなら「見た目はきれいでなくても商品が安く見えるようにしたい」という条件があり、その条件を考慮されてデザインされたチラシは「いいデザイン」となり得るのです。デザインは目的を叶えるための手段です。役割を果たすデザインが「いいデザイン」、そうでないデザインが「悪いデザイン」と考えるのは当然と言えます。
意思が反映されたデザイン
よく言う「いいデザイン」には、かわいい、センスがある、いまどきな雰囲気だ、といった印象を持つことがありますが、それが偶然なのか、それとも意図的につくり出されたものなのか、皆さんはどう思いますか?そんなこと考えたことない、という人がほとんどではないでしょうか。しかし、世の中の「いいね」と思われるデザインは、多くの場合「いいね」と思ってもらえるようクリエイターが試行錯誤して制作しているのです。役割を果たすデザインが「いいデザイン」なのは明白ですが、デザインを制作するための予算を持っている人、その予算をつかって制作するクリエイターに「いいデザインをつくろう」という意思がなければ「いいデザイン」は決して生まれません。お店で食べる料理も、料理人が「美味しい料理をつくろう」と考えているかどうかで、まったく違った料理になってしまうのと同じで、デザインするデザイナーの意識が「いいデザイン」に向かっているかどうかが、大きな分岐点となります。
とにかく仕事を早めに終わらせたい、診察券のデザインなんてこんなモンでしょう。デザイナーがそう考えて制作されたデザインは、意思が欠如したデザインです。デザイナーズ診察券では、クリニックに好印象を与えたい、患者さんの気持ちまで明るくしたい、そういった意思をもって診察券をデザインしています。デザインの経験や美的感覚だけでなく、意思があるかどうかは、デザインにとって重要な要素なのです。2つの会社のデザインを見比べて大きな違いがある場合、そういった背景があると思ってください。
デザインの良し悪しを判断する
役割を果たし、意思を持っている。それが「いいデザイン」だとすると、どうやってそれを判断していいのか…。そう考えてしまいそうになりますが、それが本当にいいデザインな多くの人が「好印象」を持つはずです。もちろん、危険区域の表示のように「不快感」をわざと表現するようなデザインもありますが、ビジネスにおいて多くのデザインは「好印象」を持ってもらえるものを目指しています。デザインを真剣に考えたことがない人でも、目で見たり触ったりしてデザインを「いいね」と思うことはあると思います。それが「いいデザイン」です。だから、ほとんどの人はある程度までならデザインの良し悪しを判断できると言えるでしょう。
しかし、本当にそのデザインがいい結果をもたらしてくれるのか、条件を満たすほど機能的であるか、多数の人の関心に訴えることができるか、といったことを判断するには、デザインへの深い理解と経験が必要になります。いいデザインは、子供から大人まで誰でも「感じる」ことはできますが、「つくりだす」にはスキルと経験がないとできません。本当の意味でデザインについて「いい」「悪い」を判断できるのは、経験の深いデザイナーでないと難しいのです。
いいデザインはいい結果を導きだします。同じような印刷仕様で料金も同じだったとしても、デザインが違うなら「同じ商品ではない」のです。同じ商品でないのであれば、料金だけで比較してもまったく意味がありません。診察券のデザインという小さな世界でも、そのデザインがもたらす効果をふまえると、一方は1万円の価値、もう一方は100万円の価値、といったこともあり得るのです。
診察券をつくる際には、各会社で用意しているデザインに対し、自分がどのような印象を受けたかをしっかり覚えていてください。何となく「いいデザインをつくっているな」と思ったら、その会社は少なからず「いいデザインをつくろう」という意思を持って取り組んでいる会社です。そして、注文した後の細かなレイアウト調整は自分で判断せずにデザイナーに任せる。診察券をつくるなら、そのような方法をお薦めします。

WRITER
ながしま 明
いつくかのデザイン事務所勤務を経て、2006年有限会社デザインウルフを設立。多くの企業の商品やサービスについてブランディング、販促活動をデザインにてサポート。ロゴ、WEB、印刷、映像、コピーと職種を超えるマルチクリエイター。
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