個性と平凡を両立するデザイン
2022.6.29診察券をつくるときに「どんなデザインがいいのか」ということを考えると思います。イラストが入った診察券なのか?写真を使った診察券なのか?カラーリングはどうしたらいいのか?などなど、漠然と「どんなデザインがいいのか」と考えると頭の中は混沌としてしまいます。デザインには理由があり、それらを判断するためには特殊な技能が必要です。信頼できるデザイナーに任せるのが一番手っ取り早く成功率も高いのですが、大まかに「こういうデザインがいい」という価値観を持っておくと決断の手助けになります。今回はデザインの「個性と平凡」についてご紹介します。
魅力的なデザインには「個性」がある
芸能界や経済界の著名人にはいわゆる「魅力的な人」がたくさんいます。得意なものを発揮して輝いている人たち。そういった人たちは、いったいどんな人たちでしょうか?容姿が優れていたり、話が面白かったり、うっとりするような歌声を持っていたり。共通して言えるのはそれぞれに「個性」を持っているということです。美人だけど特徴のある顔をしていたり、話し方に少しクセがあったり、その個性が私たちに「魅力的だ」と思わせる傾向があります。他の人にはなくて、その人にある個性。個性は差別化に貢献し、人や出来事を記憶に定着させます。一度会っただけなのに記憶に残る人、何回か会っても名前すら憶えられない人、その違いは「個性」である可能性が高いと言えるでしょう。
デザインも同じで、建築、服、家電、印刷物など世の中のデザインで「魅力がある」と感じるものには必ず「個性」があると思います。独創的なデザイン、シンプルなデザイン、優しい雰囲気のデザイン。デザインには多様なテイストがあるため、個性があるということは奇抜である、ということでは決してありません。個性の有無は「類似するものが少ない」ことと直結しているため、他ではあまり見かけないものであれば「個性的だ」と認識されることになります。
診察券のデザインについても、個性がないよりあった方がいいのは間違いありません。なぜなら診察券が個性的で魅力を感じるものなら、クリニック自身も魅力的に思えるからです。デザイナーズ診察券のデザインは、そういったことも強く意識してデザインされています。
「平凡さ」がなければ共感されない
個性的なデザインが魅力的なデザインなら「とにかく奇抜でグリグリに個性的な方がいい」と安直に考えてしまうのは間違っています。なぜかというと、人が好意的に感じるためにはある程度「共感」できる状態が必要だからです。デザインが個性に偏ってしまうと、不特定多数へのアプローチがうまくいかず、あまりにも個性的過ぎてついていけない、そう思われてしまうと本来の目的から遠のいてしまいます。だからビジネスでのデザインは、ある程度「平凡さ」が組み込まれているといいでしょう。平凡さ、つまりそれは、普通であり、ありきたりであり、一般的な状態です。例えば、もの凄く個性的で魅力的な人だけれど8割以上何を言いたいのかわからない人と仕事の打ち合わせをするのは辛いものです。だから、診察券のデザインでも個性的な魅力を持ちながらも、一般的なクリニックとしての安心感をきちんと訴求する必要があるのです。
デザインで「個性」と「平凡」を両立する
「個性」がなければ魅力がない。「平凡」でなければ共感されない。この2つの条件は共存できないように思われますが、こういう微妙なさじ加減を解決するのもデザインの力です。診察券ではイラストや写真といったビジュアル、受付時間などの文字情報がレイアウトされますが、ビジュアルも文字情報も診察券上に収まるすべてがデザインです。ビジュアルの部分は「個性」の役割を担い、文字情報の部分で「平凡」を確保する。それが魅力的な診察券のルールです。
ここで大切なのは、2つのポイントです。
- ビジュアルに余裕が感じられること
- 文字情報がきちんと整理されていること
ビジュアル部分は個性を表現する場なので、デザインが窮屈であってはいけません。要素をシンプルに削ぎ落とした状態で、少々遊びがあるくらいのデザインが理想的です。できるだけ「平凡」から遠ざけることが必要とされます。対して文字情報については、利用者の見やすさや理解しやすさを優先し、一般的で「よくある」レイアウトで整理する方がいいでしょう。このようなことをデザインに配慮することで、個性と平凡を両立するデザインが診察券の中で実現することができます。
もちろん、このような考え方はすべてのクリニックに当てはまるわけではありません。例えば、診療もシステムも内装もすべてにおいて「革新的でユニーク」なクリニックの場合、診察券のあり方も違ってくるでしょう。ですが、そうでない一般的なクリニックの場合、「個性」と「平凡」を両立するデザインという考え方がベストだと考えています。

WRITER
ながしま 明
いつくかのデザイン事務所勤務を経て、2006年有限会社デザインウルフを設立。多くの企業の商品やサービスについてブランディング、販促活動をデザインにてサポート。ロゴ、WEB、印刷、映像、コピーと職種を超えるマルチクリエイター。
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